「天地無用」の意味が誤解されやすい理由(その2 「天地無用」と「心配無用」)

※ 【「天地無用」の意味が誤解されやすい理由(その1 「天地」という言葉の誤解)】の続きです。

「天地無用」という言葉は、
ひっくり返してはいけない
という意味ですが、誤って、
ひっくり返しても良い
と解釈されることが多いと思います。

前の記事で、この言葉が誤解を受けやすいのは、次の2つの間違えやすい観点が複合しているためだと思われると書きました。
1. 「天地」という言葉の用法
2. 「無用」という言葉の用法

前の記事で、1について書きました。
この記事では、2の「無用」という言葉の用法について考えてみましょう。

タイトルに挙げましたが、「無用」を使う言葉に、「心配無用」というのがあります。
これは、「心配する必要はない」という意味ですね。
一般に、「無用」というと、この言葉の場合のように、「……の必要はない」と解釈されることが多いのではないでしょうか。

この意味で、「天地無用」の意味を解釈するとどうなるでしょうか?
自然に考えれば、「天地」というのは、「上面と下面」ということになり、「どちらが上面でどちらが下面かを考える必要はない」、という解釈になりますよね。
実際には、前の記事で書いた通り、「天となるべき部分を地にする」ということを「してはいけない」ということになるわけですが、なかなかこの解釈に辿り着きにくい気がします。

一応、Yahooの辞書で「無用」を調べておきましょう。
む‐よう【無用】
[名・形動]
1 役に立たないこと。使い道のないこと。また、そのさま。無益。「―な(の)臓器はない」⇔有用。
2 いらないこと。また、そのさま。不要。「ここでは遠慮は―です」「心配御―」「問答―」
3 用事のないこと。「―の者立ち入るべからず」
4 してはいけないということ。禁止。「立ち入り―」「開放―」「貼紙―」

[ 大辞泉 提供: JapanKnowledge ]
むよう01 【無用】
(名・形動)
[文]ナリ
[1] 役に立たないこと。
⇔有用
―の物
[2] 用事のないこと。
―の者入るべからず
[3] 必要ないこと。いらないこと。また、そのさま。
心配―
問答―
他言は―に願います
―な心配をかける
[4] 他の語に付いて、してはいけない意を表す。
天地―
落書き―

[ 大辞林 提供: 三省堂 ]

大辞泉の2と大辞林の3は、先の例の「心配無用」の意味ですね。
そして、大辞泉の4と大辞林の4が、「天地無用」の意味となります。

どちらの辞書でも、「心配無用」の「無用」、つまり、「不要」の意味が先に書かれています。
つまり、「無用」という言葉を聞いた時、どちらかといえば、「禁止」の意味より、「不要」の意味の方が、先に頭に浮かぶ人が多いのではないかと思います。

似たような意味であれば、どちらの意味が先に浮かんでも良いのですが、この場合、かなり違いますよね。
「天地」が「不要」なのか「禁止」なのかで、意味は正反対になってしまいます。

「他言無用」も、結構危険ですね。
これは、「他言してはいけない」、つまり、「禁止」の意味で「無用」が使われる例ですよね。
この点で、大辞林で3の「不要」の意味の用例に「他言は無用に願います」と書いてあるのは、ちょっと不適切なのでは、と思わなくもありません。
「他言不要」と解釈すると、「他言しなくても良いし、しても良い」と解釈され兼ねません。
「他言無用」は「他言禁止」と理解するべきですね。

この「不要」と「禁止」の構造、どこかで見たような……と思っていたのですが、そうそう、英語の "must" と "have to" の否定って、これと同じですね。
肯定で使う場合、どちらも「しなければならない」の意味ですが、否定にすると、次のように違う意味になりますよね。
must not : してはいけない(禁止)
not have to : しなくても良い(不要)

純粋に論理として考えると、「しなければならない」というのは「する必要がある」ということなので、その否定は「する必要がない」ということで、「不要」が正解ですね。
禁止の否定は許可なので、"must not" が、「禁止」を表すのなら、"must" は、「しても良い」の意味でなければなりません。
英語というのは、日本語に比べるとかなり論理的な言語であるという印象があるので、その英語で、このような論理的不整合があるのは、ちょっと意外な感じがしますね。

英語でもこんな感じなのだから、より論理的に曖昧な日本語で、これらの意味が同じ表現に同居しているのは、仕方のないことなのかもしれないですね。

でも、これが誤解されやすいことは事実です。
なので、「天地無用」とか「他言無用」のような誤解されやすい表現は、なるべく避けた方が無難ですね。
「ひっくり返してはいけない」とか「他の人に話してはいけない」といったように、ベタだけど分かりやすい表現を使うべきだと、私は思います。

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