「間違う」と「間違える」は、「自動詞」と「他動詞」?

※次の記事の続きです。
「間違う」と「間違える」の違いは?

前の記事で、「間違う」と「間違える」には、少し使い方の違いがあることが分かりました。
ここでは、それを、「自動詞」と「他動詞」の観点から、もう少し考えてみましょう。

「間違う」と「間違える」のような形式で「自動詞」と「他動詞」が存在する動詞には、以下のようなものがありますね。
自動詞他動詞ローマ字
(自動詞)
ローマ字
(他動詞)
違う違えるtiga-utiga-er-u
整う整えるtotono-utotono-er-u
従う従えるsitaga-usitaga-er-u
立つ立てるtat-utat-er-u
並ぶ並べるnarab-unarab-er-u
退く退けるsirizok-usirizok-er-u

ローマ字に注目してもらうと、この変換は、自動詞の語尾の "u" の手前に "er" を挿入することで他動詞になる、という形式であることが分かると思います。
これは、可能動詞を作る形式と同じですね。
ここでは可能動詞としてではなく、可能の意味を持たない普通の他動詞として考えますので、勘違いしないように注意して下さい。

なお、ちょっと話が逸れますが、可能動詞の成立は、このように元の動詞から直接ではなく、可能の助動詞「れる」を付けた形から "ar" を抜いた形式だと考えられます。
そして、それは「ら抜き言葉」と同じパターンであることが、ローマ字で書いてみると分かります。
これについて興味のある方は、次の記事をどうぞ。
「しゃべれる、食べれる」の「ら抜き表現」をなくすと……?

さて、話を戻しましょう。
これらの動詞については、対応が分かりやすいですよね。
自動詞は、その状態になる、またはその状態であること、他動詞は、その状態にすること、を意味していますね。
例えば、
違う - 違った状態である
違える - 違った状態にする
整う - 整った状態になる
整える - 整った状態にする
ということですね。

では、「間違う」と「間違える」はどうでしょうか?
自動詞型他動詞型
間違う間違える
あえて、「自動詞型」「他動詞型」と書きましたが、これらは、同じ意味で使うこともあり、「自動詞」「他動詞」と言い切ることはできないですね。

おそらく、本来は、そのように機能が分かれていたのが、次第に同じ意味で使われるようになったのではないかと思われます。
そもそもは、文字通り「間違えた」使い方だったものが、そのまま定着したのでしょう。

前の記事で使った表を、ここに再掲します。
「間違う」の項番「間違える」の項番意味「間違う」の例文「間違える」の例文
1-あるべき状態でない。誤っている。・間違った考え方
・君が間違っている
・間違えた考え方
・君が間違えている
21やりそこなう。・計算を間違う
・一つ間違えば命取りだ
・計算を間違える
・一つ間違えれば命取りだ
32他のものと取り違える。・約束の日時を間違う
・靴を間違う
・約束の日時を間違える
・靴を間違える

自動詞と他動詞の対照を頭に入れてこれを見ると、「間違う2」の「計算を間違う」とか、「間違う3」の「靴を間違う」などは、「間違える」を使った方が自然な感じがしませんか?
「間違う」を使うなら、「計算を間違う」よりも「計算が間違っている」と、「計算」を主語にした方が自然になります。
でも、他の例の場合は、やはり主語を物にするのが難しいですね。

「違う」と「違える」の場合、意味の差は明確です。
「違う」を使う場合は、「計算が違う」「靴が違う」と、必ず「違っている物」が主語になりますよね。
「計算を違う」とか「靴を違う」と、目的語にしたら、明らかにおかしいです。
でも、「間違う」の場合は、「計算を間違う」や「靴を間違う」などと、「間違っている物」を目的語にしても、あまり誤りのように感じられません。

「間違い」という動作は、そもそも人が何かを違えることを表すので、間違える主体なしには成り立ちにくい概念であり、そのことが、「間違う」と「間違える」の概念の違いを曖昧にさせるのでしょうか。
なかなか奥の深い、難しい問題ですね。

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