「役立たせて頂きます」は正しい表現?

『ドラゴン桜』というマンガをご存知でしょうか?
破産寸前に追い込まれた高校から東大合格者を出すべく、弁護士がユニークな教師を招き、東大合格に向け、効果的な学習方法で2人の生徒を東大に合格させるべく努力する、という内容です。
「個性重視」といった、あいまいだけど否定しにくい理想をバッサリと切り捨て、数字が全てだと割り切る考え方が痛快で、私はとても好きです。

このマンガを再び読んでいたところ、17巻の152限目の後半で、「おやっ?」と思うセリフがありました。
特進クラス担任の桜木が、生徒の矢島の父から寄付金を受け取る場面でのセリフです。
あ…これはこれはいつもどうも…
龍山高校の教育環境の充実に役立たせて頂きます

これ、ちょっとおかしいですよね?
これは、「……させて頂く」という敬語の形式です。
本来は、「相手に許可してもらい、自分が……する」という表現ですが、最近では、特に許可の要・不要に関わらず、単純な謙譲表現のように使われます。
その点が非難されることもありますが、まあ、ここでは、その問題は置いておきましょう。
(関連記事:【「拝見させていただく」は二重敬語?】)

この構文だと、「私が役立たせてもらいます」という意味になります。
つまり、
教育環境の充実に、私が役立ちます
と言っていることになってしまいます。
「役立つ」のは寄付金であり、「私」は、それを役立たせるはずなのに、その意味になっていません。

では、この構文は「……して頂く」なのでしょうか?
そうだとすると、動詞は「役立たせる」を使っていることになりますが、この構文だと、相手にお願いする形式になってしまいます。
つまり、
教育環境の充実に、あなたが寄付金を役立たせて下さい
ということになり、やはりおかしいです。

これを正しく表現するには、どうしたら良いのでしょうか?
私の動作は、あくまでも「役立たせる」なので、これに「させて頂く」を付ける必要があります。
つまり、
役立たせさせて頂きます
となります。
でも、これでは駄目ですね。
文法的には間違いはありませんが、何だか、いかにも間違いっぽい表現です。

この場合、「役立たせる」という動詞を、次のような別の形に言い換えるのが望ましいですね。
役立てる
これを使えば、次のように自然な表現になります。
役立てさせて頂きます

あるいは、「役立つ」という動詞から離れて、例えば次のような動詞を使うと、より分かりやすそうです。
活用する
これなら、「役立たせる」や「役立てる」のような使役の意味が含まれないので、より自然になります。
活用させて頂きます

いっそのこと、何かと批判されがちな「させて頂く」という表現をやめて、謙譲語Ⅱを使う方が、さらにシンプルで良いかもしれませんね。
活用致します

でも、この例の場合、相手からもらった寄付金の使い道について話しており、「このような用途で使わせてもらおうと思う」という意思表示をしているのですから、「させて頂く」を使うのが、やはり良いのかもしれませんね。

さて、実用的な目的としては、以上で答えが出ました。
でも、これとは別に、「役立たす」という言葉について考えてみると、ちょっと面白い発見があります。
これについては、次の記事でお話します。
「作らさせて頂きます」は「さ入れ言葉」ではない?

広告

カテゴリ
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

ブログ内検索
Amazon 検索
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

関連サイト
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR