「くだらない」「つまらない」「すまない」

※次の記事の続きです。
「けしからない」「たゆまない」「見果てない」

前の記事で扱った言葉たちは、古語の助動詞「ぬ」の形式で使われることがほとんどで、現代語の助動詞「ない」に置き換えると不自然でした。
けしからぬ → けしからない
たゆまぬ → たゆまない
見果てぬ → 見果てない

これらと比べて、「くだらない」という言葉は、むしろ、現代語の助動詞「ない」で終わる形式の方が一般的ではないでしょうか。
「くだらぬ」も使いますが、おそらく「くだらない」の方が多く使われるのではないかと思います。

でも、「くだらなく」ないことを「くだる」とは表現しません。
つまり、前に挙げた3例と同様、「くだらない」も、否定の形でしか使われません。
それなのに、前の3例とは違い、現代語の助動詞「ない」で終わる形式が普通に使われているところが、ちょっと不思議です。
似たような成り立ちに見えるのですが、何が両者を分けたのでしょうか。
この理由は、どうも分からないので、ここではそっとしておいてあげて下さい。

さて、現代語の打ち消しの助動詞「ない」が使えるということは、丁寧の助動詞「ます」を付けて、次のようにも表現できるはずです。
くだりません
でも……、どうですか? 聞いたことないですよね。
じゃあ、「くだらない」は「下る」の打ち消しではないのでしょうか?
でも、「くだらぬ」と言いますよね。
すると、「くだらぬ」は、「おぼつかぬ」や「やるせぬ」の仲間なのでしょうか?

※ 「おぼつかぬ」や「やるせぬ」については、以下の記事を参照して下さい。
「おぼつかないです」「おぼつきません」どちらが自然?
「おぼつきません」的な語形が成立する形容詞の条件
「おぼつかぬ」の仲間「やるせぬ」

まずは、「くだらない」の語源を調べてみましょう。
検索エンジンで、「くだらない 語源」で検索してみると、次のサイトが見つかりました。
語源由来辞典

このサイトの、「くだらない」の語源には、いくつかの説が記載されています。
以下、それらを要約して記載します。
1. 「下る」は「通じる」。つまり「下らない」は「通じない」。それが後に「取るに足りない」の意に転じた。
2. 上方から入ってくるものが「下りもの」。それ以外のものは「下らない」もの。
3. 百済でないもの、つまり「百済ない」。
4. 仏教にある「ダラ」という九つの教え。それがひとつもない、つまり「九ダラない」。

色々な説があるんですね。ちょっと驚きです。
これらは、大体、確からしいと思われる順に記載されているようです。
私個人としては、2の説はかなり面白いし、説得力があるような印象を受けたのですが、「下りもの」という言葉の使われる以前から「くだらぬ」は使われていたため、この説は考え難い、とのことです。

ところで、これらの説、1と2は「下る」+助動詞「ない」、3と4は「くだら」+形容詞「無い」、という形式になっています。
3や4の説が正しいとすると、「くだらぬ」という言葉は、文法的な成り立ちとして「けしからぬ」「たゆまぬ」「見果てぬ」のような「動詞+ぬ」ではなく、「おぼつかぬ」や「やるせぬ」のように、「名詞+ない」の形容詞が、後に誤用として「名詞+ぬ」に変化した形、ということになります。
どちらが正しいのかは分かりませんが、私は「下る」+「ない」だと信じたいです。

まあ、「くだらない」が「下る」+「ない」ではなかったとしても、似たような言葉として、「つまらない」というのがあります。
つまらない
こちらは、「詰まる」+「ない」で、ほぼ間違いないですよね。
先の語源由来辞典で調べてみても、やはりそのように書いてあります。

そして、これも、「くだりません」と同様、次のような語形になりません。
つまりません
「くだりません」よりは、まだ使われそうでしょうか?
でも、出現頻度は相当低いように思います。
そもそも、「くだらない」や「つまらない」は、元の動詞の打ち消しという意味合いがほとんど感じられず、形容詞的に使われるようになっています。
なので、元の動詞のような活用をさせると違和感があり、あまり使われないのだろうと想像されます。

でも、元の意味をほぼ失っていても、元の動詞の活用をさせられるものもあります。
すまない → すみません
これは、良く使われますよね。

まあ、これは、比較的元の意味の消失度合いが低いからでしょうか。
謝って済むことではない

済まない

すまない
という意味の類推は、「くだらない」や「つまらない」よりは容易な気がします。

でも、謝罪の言葉としての「すまない」と、「済む」の打ち消しの「済まない」では、やはり、ある程度明確な意味の違いはありますよね。
「こんなことをしたら、ただでは済まないぞ」
と言えば、これは明らかに「済む」+「ない」の意味だし、
「こんなことに巻き込んでしまって、本当にすまないと思っている」
と言えば、これは「済むことがないと思っている」わけではなく、「悪いと思っている」という、謝罪の意味ですよね。

おそらく、「くだりません」や「つまりません」と比べて、「すみません」が自然に使える理由としては、これが謝罪の言葉だからかな、と私は思います。
謝罪の場合、丁寧語にして使うのが普通ですよね。
なので、丁寧の助動詞「ます」を付けた「すみません」が、良く使う表現として残っているのではないでしょうか。

言葉の成り立ちや変化は、後になるとなかなかその真相が分かりませんが、こうやって色々想像してみるのは、楽しいですね。

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