「しゃべれる、食べれる」の「ら抜き表現」をなくすと……?

「しゃべれる、食べれる」は、昔、コンビニエンスストアのキャッチコピーとして有名になった言葉ですね。
1980年代の前半でしょうか。
テレビCMが良く放送されていたので、今でも耳に残っています。

「日本語の乱れ」にうるさい人であれば、「ら抜き言葉だ、けしからん!」となるところでしょう。
でも、私は、これは非常に良くできたコピーだと思いますね。
だって、これを「しゃべれる、食べられる」としたら、途端に語呂が悪くなりますよね。
本来は「食べられる」だけど、「食べれる」でも意味が通じる、という日本語の柔軟さが、この名コピーを生んだわけです。

「あれ、ら抜きを正したら、『しゃべられる、食べられる』になるんじゃないの?」と思った方、いませんか?
そう、これはちょっと勘違いしそうになります。
でも、「しゃべられる」って、不自然な感じがしませんか?
実は、この「しゃべられる」という表現には、「ら入れ言葉」という呼び名が付いています。

「しゃべられる」という表現は、元々正しい可能の表現でした。
でも、五段活用の動詞の可能表現は、今日では「可能動詞」を使うのが一般的です。
「しゃべる」の可能動詞は「しゃべれる」です。
以下、動詞の活用別に、助動詞「れる」「られる」を付けた形と、可能動詞の形を書いてみます。

五段活用動詞(ラ行以外)
元の動詞未然形「れる」付与可能動詞
書く書か書かれる書ける
立つ立た立たれる立てる
思う思わ思われる思える

ラ行五段活用動詞
元の動詞未然形「れる」付与可能動詞
しゃべるしゃべらしゃべられるしゃべれる
走る走ら走られる走れる
帰る帰ら帰られる帰れる

上一段活用、下一段活用、カ行変格活用動詞
元の動詞未然形「られる」付与「れる」付与
見る見られる見れる
食べる食べ食べられる食べれる
来る来られる来れる

「しゃべる」は、ラ行五段活用動詞です。
ラ行以外の五段活用動詞だと、可能動詞の語尾は「れる」にはならないので問題ありません。
でも、ラ行五段活用動詞の場合、可能動詞の語尾が、「れる」となり、これは、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用動詞に助動詞「れる」を付けた、いわゆる「ら抜き言葉」と同じに見えてしまいます。

そのため、ら抜き言葉を使ってはいけない、と極度に過敏になっている人の場合、「あれ、『しゃべれる』は『ら抜き』かな?」と勘違いして、「ら」を入れて「しゃべられる」としてしまう、というわけです。
これが「ら入れ言葉」です。

もっとも、先に述べた通り、元々は、「しゃべる」の可能表現は「しゃべられる」でした。
同様に、「書く」の可能表現は「書かれる」、「立つ」の可能表現は「立たれる」だったわけです。
助動詞「れる」を付与した形は、一応現在でも「可能」の意味も持つとされていますので、「しゃべられる」「書かれる」「立たれる」を可能の意味で使っても誤りではありません。
でも、ちょっと意味は通じにくいですよね。

この表を上下に見比べてもらうと、五段活用の可能動詞と、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用動詞に「れる」を付与した、いわゆる「ら抜き言葉」が、非常に似た構造になっていることに気付かれると思います。
どちらも、ローマ字表記した時に、間にある "ar" を取り除いた形になっているのです。
本来の表現ローマ字可能動詞/ら抜き言葉ローマ字
書かれるkak-ar-eru書けるkakeru
立たれるtat-ar-eru立てるtateru
しゃべれるshaber-ar-eruしゃべれるshabereru
見られるmir-ar-eru見れるmireru
食べられるtaber-ar-eru食べれるtabereru
来られるkor-ar-eru来れるkoreru

こう考えると、「ら抜き言葉」は生まれるべくして生まれた言葉なのだなぁ、とつくづく感じます。

※ら抜き言葉関する他の記事
「れる」と「られる」について
ら抜き言葉の見分け方と回避策

広告

カテゴリ
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

ブログ内検索
Amazon 検索
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

関連サイト
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR