「伺う」と「参る」の違い

「伺う」と「参る」の違いは、いくつかあります。

まず、意味としてはそれぞれ、
「伺う」は、「訪問する」「尋ねる」「聞く」
「参る」は、「行く」「来る」
の意味を持ちます。

また、敬語の種類の違いとして、
「伺う」は、謙譲語Ⅰ
「参る」は、謙譲語Ⅱ
です。

謙譲語Ⅰとは、
動作の向かう先を立てる敬語
であり、
謙譲語Ⅱとは、
話している相手を立てる敬語
です。

これらをふまえた上で、「伺う」と「参る」の使い分けについて考えてみましょう。

<ケース1>
「尋ねる」とか「聞く」という意味の場合、当然、「伺う」しか使えません。

・相手の名前を聞く場合
お名前を伺ってもよろしいですか?
・あることについて、相手側の人から話を聞いているか尋ねられた時の返事
はい、その件については、○○様より伺っております。

なお、ここでちょっと注意を。
「はい、伺っております」は、あくまでも、「相手側の人」から聞いている場合の敬語表現です。
「自分側の人」(自分の所属する会社の社員など)から伝え聞いている場合は、「伺っている」だと、自分にそのことを伝えた自分側の人を立ててしまうことになり、適切な表現ではありません。
この場合は、「伝え聞く」の謙譲語Ⅰである「承る」を使うのが良いでしょう。
はい、承っております。
あるいは、「伝え聞く」の動作部分には敬語を使わず、次のように言ってもそれほど問題はないかもしれません。
はい、聞いております。

<ケース2>
「伺う」には「来る」の意味がないので、「来る」を敬語にする場合は「参る」しか使えません。

・客を応接間に通して、担当者がすぐに来るよ、と伝える場合
担当の者がすぐに参りますので、少々お待ち下さい。
・二人で来る予定で、もう一人が少し遅れているが、すぐに来ることを伝える場合
申し訳ありません、○○は少々遅れておりますが、すぐに参ります。

<ケース3>
自分側の人のところへ行く場合、「参る」しか使えません。
(「伺う」を使うと、自分側の人を立てることになってしまうので)

・自分側の人間である「父」のところへ行くことを、話している相手に対して丁寧に述べる場合
明日は、父のところに参ります。

<ケース4>
行こうとしている先が、「立てるべき対象の人」である場合は、一応どちらを使っても問題ないと考えられます。

・明日、客のところへ行くことを伝える場合
それでは、明日、御社へ伺います。
それでは、明日、御社へ参ります。

このケースでは、一応どちらでも間違いではないと考えられますが、「伺う」の方がより適切に感じられます。
おそらく、以下のような理由からでしょうか。
・「伺う」は謙譲語Ⅰなので、訪問先である相手を立てる意思が明確に示される。
・「参る」には「行く」と「来る」の意味があるが、「伺う」には「来る」の意味はないので、「訪問する」という意味が明確になる。

なお、「参る」は話している相手を立てる「謙譲語Ⅱ」ですが、これはあくまでも「謙譲語」なので、動作主体をへりくだる意味があります。
なので、相手側の人の動作に使うのは適切ではないとされるので、次のような形では使わないようにするのが無難です。
・相手側の人が、明日こちらに来ると言っていたことを伝える場合
(適切でないとされる表現)
○○様は、明日参られると申されておりました。
この例文のような表現は、相手の動作に以下の謙譲語Ⅱが使われているので、適切ではない表現とされます。
「参る」(=来る)
「申す」(=言う)
「おる」(=いる)
謙譲語Ⅱを相手の動作に使うことの是非については、次の記事もご覧下さい。
「おられる」「参られる」「申される」「致される」は誤り?

相手の動作を、全て尊敬語にしてみましょう。
○○様は、明日いらっしゃるとおっしゃっていらっしゃいました。
うーん、敬語の形式としては全く問題ないんですけどね……。
「っしゃ」が3つ並び、相当うっとうしいですね。

次のように言い換えれば良いですかね。
○○様は、明日いらっしゃるとお聞きしております。
次の表現でも良さそうです。
○○様は、明日いらっしゃると伺っております。
ただ、「伺う」は「聞く」だけでなく、「行く」の意味も持っていますよね。
私の感覚としては、「いらっしゃる」と一緒に使うこの場面では「お聞きする」を使った方が意味が明確になって良い気がします。
これは、人によって好みが分かれるところかもしれませんが。

文章というのは、ルール通りに作れば良い、というものではなく、できあがった表現が不自然でないか、意味が分かりやすいか、などのことにも配慮しなければならないので、色々と面倒ですね。

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