「拝見させていただく」は二重敬語?

「拝見させていただく」が二重敬語かどうか、というのは、簡単には結論を出せない問題です。

「見る」を敬語にする例として、以下の表現をそれぞれ考えてみましょう。
拝見します
拝見いたします
ご拝見します
ご拝見いたします
拝見させていただきます

拝見します
「拝見する」は「見る」の謙譲語Ⅰ、「ます」は丁寧語です。
どちらも、「見る」という一語の動詞に対する敬語ですが、「謙譲語Ⅰ」と「丁寧語」という異種の敬語なので、二重敬語ではありません。

拝見いたします
「拝見する」は「見る」の謙譲語Ⅰ、「いたす」は「する」の謙譲語Ⅱ、「ます」は丁寧語です。
「見る」という一語の動詞に対して、謙譲語が2つ使われていますが、「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ」という異種のものなので、二重敬語ではないと考えられます。

ご拝見します
こんな敬語表現は、まず見かけませんが、一応可能性として。
「お(ご)……する」は謙譲語Ⅰの一般形、「拝見する」は「見る」の謙譲語Ⅰ(特定形)です。
「見る」という一語の動詞に対して、「謙譲語Ⅰ」が二重に使われているので、これは二重敬語です。

なお、「お伺いします」という敬語表現がありますよね。
この表現は良く見かけますし、「ご拝見します」ほど、違和感を覚える人は多くないと思います。
でも、これは「ご拝見します」と全く同形の二重敬語です。
(【二重敬語「お伺いする」と「お見えになる」】参照)

「お伺いします」は、平成19年2月2日の文化審議会答申「敬語の指針」でも、「習慣として定着している二重敬語の例」として例示されています。
「定着」と表現されていますが、「正しい」と明記されているわけではありません。
まあ、「許容される場合が多い」といった感じで捉えておけば良いのでしょうか?

ご拝見いたします
これも見かけない表現ですが、一応形式として。
「お(ご)……いたす」は、「謙譲語Ⅰ」兼「謙譲語Ⅱ」の一般形です。
上と同様、「謙譲語Ⅰ」が二重に使われているので、二重敬語です。

拝見させていただきます
「敬語の指針」によると、「(お・ご)……(さ)せていただく」というのは、「敬語の形式」のひとつであるとは書かれていますが、「謙譲語Ⅰの一般形」であるとは書かれていません。
これが「謙譲語Ⅰの一般形」なのであれば、「ご拝見します」と同様、二重敬語となるわけですが、「謙譲語Ⅰではない」ということであれば、異種の敬語なので、二重敬語ではないことになります。
(異種の敬語でも許されないのであれば、「拝見します」も二重敬語ということになってしまいます)
この点がグレーなので、「『拝見させていただく』は二重敬語である」と言い切ることはできないように思います。

もっとも、「拝見させていただきます」が二重敬語であるかどうかの問題以前に、そもそも、この「……させていただく」という敬語形式そのものに嫌悪感を覚える人も少なくないようです。

「頂く」という言葉は、「相手の許可」を得る必要がある行為であり、また、その行為をすることにより、「自分が恩恵を受ける」場合に適切であると感じられます。
ところが、近年、この敬語形式が、そのような条件の有無とは無関係に乱発されることが多いので、それに嫌悪感を覚える、というのがひとつの理由だと思います。

まあ、これも、理屈の付け方ひとつで、理にかなう説明はできる気もするんですけどね。
「頂く」を正当化する理屈は、次の記事を参照して下さい。
「お休みを頂いております」は間違い?

また、もうひとつの理由として、「やらさせていただきます」のように、五段活用動詞に本来接続されるはずの使役の助動詞は「せる」であるところを、「させる」が接続される、いわゆる「さ入れ言葉」の存在も関係しているのではないかと思います。
「さ入れ言葉」については、次の記事を参照して下さい。
「さ入れ言葉」

まあ、いずれにしても、「拝見します」で謙譲語の形式になっているので、「拝見させていただきます」は使わない方が無難かもしれませんね。
ただ、「拝見させていただきます」が普通になると、「拝見します」は敬語として十分でないように感じられるようになる恐れもありますので、周りの人の言葉遣いに注意しながら、適切と思われる表現を選ぶようにするのがベストでしょう。

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