改めて考えてみると不思議な表現

主にあいさつの言葉などで、慣用的に使われている言い回しってありますよね。
それらの言い回しについて、その語義を忠実に解釈してみると、とても奇妙な感じがする言葉というのは、結構多く存在します。

おはようございます
非常に良く使われるあいさつですよね。ほとんどの人にとって、使わない日はないというくらい、良く使われるあいさつだと思います。
主に午前中に使われるあいさつだと思いますが、業種によっては、夜使う人も多いと思います。
「夜のあいさつなのに、おはようだなんて……」とそんな用法を嫌う人もいますが、語義を忠実に解釈してみると、そんなことどうでも良いくらい、この表現は面白いです。

この言い回し、ほとんどが敬語です。
先頭の「お」は美化語(3分類では丁寧語)、最後の「ございます」は丁寧語です。
つまり、意味のある言葉は「はよう」だけですね。
「はよう」は「早い」の連用形「早く」の「く」が音便化して「はやう」になり、発音としては「はよう」となったものです。

つまり、「おはようございます」から敬語を取り除くと、次のようになります。
早い
うーん、「早い」と言われてもねえ……。
朝、職場へ行って、たいていの人は「おはようございます」とあいさつを交わすと思いますが、別に「早く」はないですよね。いつも通りです。

このあいさつは、別に「早い」と言いたいわけではないんですよね。
今日もこれから一日の仕事が始まるけど、今日もよろしくね
といった気持ちを込めて、このあいさつを使っていると思います。
そんな風に考えてみると、別に「夜は使っちゃ駄目」なんて言わなくてもいいんじゃないかな、と思います。
朝使う場合でも、本当に「早い」を表現しようとして使われることは、非常に少ないはずですからね。

こんにちは
これも良く使いますね。これは、次のような意味ですよね。
今日は……
うん、今日は何?

夜のあいさつも同じですね。
こんばんは
今晩は……
うん、今晩は何?

別れのあいさつも奇妙ですね。
さようなら
漢字で書けば「左様なら」ですね。
「左様」というのは、「そのような様子」ということですね。
つまり、こういうことです。
それならば……
うん、それならば何?

これは、もう少しくだけた仲間内で使うあいさつも同じような形式ですよね。
それでは
それじゃ
では
じゃあね

いずれも、前の文脈を受けて、「それならば……」と言いかけている表現ですね。
まあ、つまり、「それならば、お別れしましょう」ということですよね。
「お別れ」という、ちょっとネガティブな言葉をはっきり口にするのが憚られるので、そこを濁すのが日本人の美徳、といった感じでしょうか。
とはいえ、前の文脈を受けて別れの話になっていることは稀ですよね。
「あ、用事があるから、そろそろ行かなきゃ」「あ、さようなら……」という流れなら、文脈に沿っていますけどね。

お礼を言われた時に、「気にしないで下さいね」という意味で使う次の表現も面白いですね。
どういたしまして
これは、次のような疑問文ですね。
どうしたか?

この表現だと、まだ分かりにくいですね。ここでいう「した」というのは、こちらのしたことを指しているわけですね。
そして、古文の授業で登場した「反語」の形式になっていると考えられます。
それらを考慮すると、次のような意味だと思います。
(私が)何をした?(いや、感謝されるようなことはしていない)
うーん、回りくどい!
でも、日本人の奥ゆかしさの現れた、きれいな表現である、とも受け取れますね。

最後に、感謝の表現。
ありがとうございます
これは、「おはようございます」と同じ形式ですね。
「有難い」の連用形「有難く」の「く」が音便化して「有難う」、つまり「ありがとう」になったわけです。
「有難い」は、漢字の意味から分かる通り、語源としては、その事象の発生が非常に稀であることを意味しますね。

つまり「ありがとうございます」の敬語を除くと、次のようになります。
稀だ
いやいや、稀ではないでしょう。
例えば、頼まれていたことをやってあげて「ありがとうございます」と言われたら、相手の人は、よほど人望がなくて、頼んだことを人がやってくれることが非常に稀であることになり、かわいそうになっちゃいますね。

でも、場面によっては、本当に「有難い」ことである場合もありますね。
例えば、乞食が空き缶を置いて、ほとんどの人が素通りする中、たまにお金を入れてくれる人がいたら、それは本当に稀なことだから、美化語の「お」まで追加して、
おありがとうございます
とでも言いたくなるのかもしれません。

と、このように、日常何気なく使っている言葉の中には、そもそもの語源の意味合いから、かなりかけ離れた意味で使われる言い回しがたくさんあると思います。
でも、これらの用法は、当然「言葉の乱れ」でもないし、ましてや「誤用」だと言う人はいないでしょう。
言葉の使い方がちょっと伝統的なものと違ってくると、すぐに「言葉の乱れだ」とか「誤用だ」とかまくしたてる人がいますが、結局、多くの人になじむ言葉は、いずれ定着して「乱れ」や「誤用」から、「正しい用法」へと呼ばれ方が変わるのだと思います。

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