「ませんでしょうか」「ますでしょうか」「ますですか」

「予定を変更しても、問題ございませんでしょうか」
「本日中にご回答いただけませんでしょうか」
これらは、ひとつの動詞に対して、丁寧語の「ます」と「です」が一緒に使われているので、いわゆる「二重敬語」と呼ばれる形式で、「望ましくない」とされています。

でも、このような表現を目にする機会は、結構多いと思います。
上記の例は、いずれも、「予定変更」とか「急な回答依頼」など、相手に少しひけめを感じている時に出やすくなるのではないかと思います。
あるいは、かなり偉い人に対する連絡で、普段より高いレベルの敬語を使う必要があると感じている時にも、このように表現しがちかもしれません。

上記の表現から二重敬語を外すと、以下のようになります。
・「です」を削除した場合
「予定を変更しても、問題ございませんか」
「本日中にご回答いただけませんか」
・「ます」を削除した場合
「予定を変更しても、問題ないでしょうか」
「本日中にご回答いただけないでしょうか」
二重敬語を目にする機会が多くなった昨今では、二重敬語を使う表現と比べて、これらの表現が、少しぶっきらぼうに感じられてしまうのも事実です。
連絡する相手の人となりや、社内の他の人の使い方などを考慮した上で、柔軟に使い分ける必要がありそうです。

なお、二重敬語を外したい時に、「です」を外すか「ます」を外すかも迷うところです。
まず、「ます」を外して、「ないでしょうか」にする場合、これは終止形+「です」の形になり、これを誤用だと嫌う人がいます。
一方、「です」を外して、「ありませんか」にする場合、「ないでしょうか」という推量の疑問形と比べて、多少柔らかさが減り、相手に回答を強要しているニュアンスが感じられなくもありません。

「ます」を推量の疑問形にすると「ましょうか」ですが、これはあまり使われなくなっていますよね。
問題ございましょうか
この表現は、近年、あまり目にしませんね。
さらに、「ます」は動詞にしか接続できないので、否定推量疑問にすることができません。
問題ないましょうか
これは、目にする、目にしない以前の問題で、文法的に成り立たっていないですね。
動詞に「ない」を付けて否定にした時に、それが形容詞型の活用になってしまうので、肯定と疑問で活用が一致しないわけです。
古語では「ざり」という、動詞の活用をする否定の助動詞があったんですけどね。
これは、現代語文法の非常に大きな問題だと思います。

「ます」を肯定で使う用例も、近年増えてきて、違和感が少なくなってきたように感じます。
「本日中にご回答いただけますでしょうか」
これは、「ませんでしょうか」と比べて、本日中の回答が必須の場合に使われるのではないかと思います。
「急な話で悪いけど、今日中に必要なので、なんとかよろしく頼むよ」という感じですね。

この表現を、推量疑問で柔らかくしようとすると、
「本日中にご回答いただけましょうか」
となります。文法的には正しいはずですが、これは近年あまり使われず、違和感がありますね。
「本日中にご回答いただけるでしょうか」
は、終止形+「です」になってしまうし。
推量疑問を、「希望+思う」の形で肩代わりさせようとするのが、次の表現ですかね。
「本日中にご回答いただきたく存じます」
二重敬語をどうしても回避する必要があれば、この表現がニュアンスが最も近く無難な表現でしょうか。

「ます」と「です」の組み合わせは普及していますが、次のような表現は見かけませんよね。
「本日中にご回答いただけますですか」
この表現が普及しないのは、必要ないからなのだと思います。
断定なら、「ます」で用が足りているので、わざわざ「です」まで呼び出す必要はありません。

まずは、「ます」の否定推量疑問を表現するために、「ませんでしょうか」が発生した。
それを受け、肯定と否定で同じ形式が使えると便利なので、「ます」にも「でしょうか」が接続されるようになってきた。
「ます」と「です」の二重敬語は、こんないきさつで普及してきたのではないかと、私は考えています。

近年のいわゆる「日本語の乱れ」と呼ばれる用法変化の中には、このような日本語文法のいびつさが大きな原因となっているものも、少なからずあるのではないかと思います。

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