確かに、「申し訳ある」という言葉はありませんが……

「申し訳ありません」「申し訳ございません」は誤用?】で、「申し訳ございません」とか「申し訳ありません」のような表現を誤りであるとする主張する人がいる、という話をしました。
この批判は、以下の前提の元、成り立っています。
「申し訳ない」は「申し訳」と「ない」に分離することのできない、一語の形容詞である

ところで、この「『申し訳』と『ない』の不可分性」を、以下のように説明する人がいます。
もし「申し訳」と「ない」を分離できるのなら、「申し訳ある」という単語も成立するはずだが、このような言葉はない。
よって、「申し訳」と「ない」は分離することができず、「申し訳ない」は一語の形容詞である。
この理屈、皆さんはどう思われますか?
私には、これが筋の通った正しい論理だと思えません。

例えば、【「申し訳ありません」「申し訳ございません」は誤用?】でも例として挙げた、以下の表現について考えてみましょう。
お詫びの言葉もない
返す言葉もない
これらの表現は、それぞれ「お詫びの言葉」や「返す言葉」が「ない」ということを表現しており、この場合「ない」は独立した形容詞です。

なので、次のように「ない」を「ございません」に置き換えることができます。
お詫びの言葉もございません
返す言葉もございません

では、これらの表現について、それぞれ、「ない」を「ある」に替えて、以下のように表現することができるでしょうか?
お詫びの言葉もある
返す言葉もある
こんなナンセンスな言葉を使う人を、私は見たことがありません。
でも、文法的に見た場合、これらの表現に、何一つ間違いはなく、文法的に何の問題のない表現です。
つまり、たまたまそのような言葉はありませんが、文法的に成立し得ない言葉ではありません。

「申し訳ない」を「申し訳ある」にするのも、これと全く同じことです。
「申し訳ある」という言葉は、確かに助詞は省略されていますが、文法的には、何ら問題ありません。
(助詞を省略して、名詞の後に動詞の「ある」をそのまま接続する例としては、例えば「節度ある」のような表現がありますね)
つまり、「申し訳ある」という言葉は、形式としては問題ありませんが、言葉自体がナンセンスであり、使う場面がないので、使われることがないだけです。

意図してか意図せずかは分かりませんが、「文法的に誤りがある」ことと「使われない言葉である」ことが混同されているために、このような批判が出てくるのだと思います。
議論する時には、論じている対象をいつの間にかすり替えてしまったり、あるいは逆に、論じている対象がすり返られたことに気付かずに受け入れてしまうことのないよう、論じている対象を的確に見定めておくことが肝要ですね。

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