可能と受動は似ている?

「れる」と「られる」について】で、いわゆる「ら抜き言葉」について書きました。

「ら抜き言葉」というのは、本来、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用の動詞に対して、受動・可能・尊敬・自発の助動詞としては、本来「られる」が接続されるところを、可能の用法に限って「れる」が接続される状態を言います。

そもそも、「れる」や「られる」という助動詞に、役割が色々と持たされ過ぎだよな、と思いますよね。

実際、現在では、五段活用の動詞では、助動詞「れる」が可能の用法で使われることは、ほとんどありません。
代わりに可能動詞を使いますね。
それと同様に、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用の動詞の場合でも、可能の場合は「れる」、受動の場合は「られる」と使い分けることにより、意味の違いが分かりやすくなります。
「ら抜き言葉」は、発生するべくして発生したものだと思います。

「尊敬」の用法は、それよりも前に切り離されていますね。
「食べる」の尊敬語は「食べられる」でも良いですが、ほとんどの場合「召しあがる」が使われますね。
「食べる」に対する「召しあがる」のような尊敬語は特定形と言います。
特定形の存在しない動詞、例えば「書く」の場合、助動詞「れる」「られる」を使って、「書かれる」と尊敬語にすることもできますが、これについても、「お書きになる」という形式を使う方が、尊敬語であることを、より明確にできます。

そんな感じで分化してきている役割ですが、そもそもこれらがひとつの助動詞で表現されてきたということは、似た部分があるからなんですよね、きっと。
今回、「受動」と「可能」のどちらの用法と考えても成り立ちそうな表現を探してみました。

例えば、こんなのはどうでしょうか。
これは、滅多に見られない光景だ。
少し言葉を足したりして、次のようにすると、受動と可能の意味を明確にできます。
「受動」
これは、滅多に見られることのない光景だ。
「可能」
これは、滅多に見ることのできない光景だ。

これ、どちらの表現でも、意味が通じますよね。しかも、意味もほとんど同じように感じます。
「見られることがない」ということは、つまり、その光景が現れることがないんですよね。
で、現れないということは、つまり「見ることができない」わけです。
なるほど、ひとつの助動詞が役割を兼ねているだけあって、似てるんだな、と思ってしまいます。

続いて、こんな例はいかがでしょうか。
手塚治虫という偉大な漫画家は、今日もなお、多くの漫画家にとって、越えられない壁として立ちはだかっている。
あ、これはあくまで例文ですよ。事実かどうかは分かりません。
これも、受動と可能にしてみましょう。
「受動」
越えられることのない壁
「可能」
超えることのできない壁
これも、どちらでもありという気がしますね。

でも、もちろん、このように受動と可能で意味が一致しない場合もあります。
というより、ほとんどの場合は一致しないのかな?

例えば、
食べられない料理
といった場合、
「受動」
食べられることのない料理
「可能」
食べることのできない料理
この場合、両者で意味が違ってきますよね。

「食べられることのない料理」は、事情は分かりませんが、だれにも食べられる機会のない料理なんですね。
食べられることがないということは、そもそも、その料理を作れる人がいない、ということなのかもしれませんね。
あるいは、亡くなった人の好きだった料理を作って、仏壇にお供えしたとか……。
ちょっと悲しい例になってしまいました。

一方、「食べることのできない料理」は、料理自体はあるし、食べようと思えば食べることはできるんじゃないかと思われます。
でも、ものすごくまずいとか、毒が入っているとか、とにかく食べることはできないんでしょうね。

でも、こうして見てみると、あまり違いはないようにも思えてきますね。
私はたまたま上のように解釈しましたが、他の人が見れば、別の解釈になるかもしれません。
「食べることができない」のであれば「食べられることもない」わけで、どちらの場合も、結果として「料理が食べられることなく、そのまま残る」ことになり、どちらも同じ意味のように思えてきてしまいました。

「受動」と「可能」、英語などでは全く異なる形式で表現されますが、日本語では、同じ形式で表現されてきました。
でも、その日本語でも、近年、受動と可能の表現形式が分化してきた背景には、ひょっとすると、英語から影響を受けている、といった側面もあるのかもしれませんね。

広告

カテゴリ
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

ブログ内検索
Amazon 検索
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

関連サイト
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR