「さ入れ言葉」

「さ入れ言葉」とは次のようなものです。
やらせて頂きます → やらさせて頂きます
つまり、「やる」という五段活用動詞の後に続く使役の助動詞には、従来「せる」が使われていましたが、ここで「させる」が使われるケースが「さ入れ言葉」ということです。

接続される助動詞が従来のルールと異なる、という意味では「ら抜き言葉」と似ていますね。
でも、この用法は「ら抜き言葉」と比べると、比較的新しいものだと思います。テレビなどでも耳にするようになったのは、2000年代に入ってからでしょうか。少なくとも、「昭和」の時代には、あまり耳にしなかった言い回しだと思います。

さて、この表現も、「ら抜き言葉」同様、発生してしかるべき理由があるように思われます。

動詞の活用の種類別に、文法上、どのように使役の助動詞が接続されるルールとなっているかを、以下に示します。
五段活用「やる」 → やらせる
上一段活用「降りる」 → 降りさせる
下一段活用「付ける」 → 付けさせる
カ行変格活用「来る」 → 来させる
このように見てくると分かる通り、使役の助動詞「せる」というのは、五段活用の動詞にしか使われません。なんか、面倒くさいですよね。
「さ入れ言葉」により、五段活用動詞にも「させる」を接続するようにすれば、使役の助動詞は「させる」に統一することができ、文法のルールは非常にすっきりします。

いわゆる「誤用」というのは、人が間違えやすい部分について発生するもののはずです。
間違えやすいということは、そのルールに何かしら間違えやすい問題がある、ということではないでしょうか。
ルールというのは、なるべくシンプルで間違えにくいものであるべきであり、そういう意味では「さ入れ言葉」は良い言葉だと思います。

でも、私自身は、「さ入れ言葉」は使わないですね。
それは、「正しい日本語」を使わなければならない、といった使命感によるものではありません。
というより、そもそも私は、そういった使命感というか義務感は、窮屈であまり好きではないです。
言葉は生き物です。時代と共に変化する言葉と常に向き合い、最新の用法を理解しておくべきでしょう。まあ、新しい用法を無理に使う必要はないですけどね。

私が「さ入れ言葉」を使わないのは、単純に「発音しにくい」からです。
使役の助動詞の成り立ちの詳しいことは分かりませんが、想像するに、この「発音のしにくさ」から2種類に分化したのではないでしょうか。

やらさせて頂きます
これって、「らさ」とア段が2つ並び、しかもその直後に「させ」とサ行が2つ並び、ちょっとした早口言葉です。
早口言葉は、ちょっと大げさかな? でも、それが発音しにくいことから、五段活用動詞とそれ以外の動詞とで、「せる」と「させる」を使い分けるようになったのだろうと、私は思っています。

というより、文法というのは、そもそも後付けで作られるものなので、単純に「さ」を省略した、というだけのことですね。
まあ、言ってみれば、
むかしむかし、五段活用も含めて、全ての動詞について、使役の助動詞は「させる」でした。
ある時、五段活用動詞に続く使役の助動詞「させる」の「さ」を省略する、いわゆる「さ抜き言葉」が流行しました。
発生当時は「最近の若い者の言葉遣いは……」と眉をひそめる人が大勢いましたが、やがて、「さ抜き言葉」は正しい用法として定着しました。
てな感じじゃないかな、と想像してみたりするのです。
とはいっても、古文でも使役の助動詞は「す」「さす」に分かれているので、相当大昔の話になりますけどね。

そして、今、悠久の時を超え、再び、「さ入れ言葉」に戻るかもしれないのです。そんな歴史的瞬間に、私たちは立ち会っているのです……。
そんな風に考えると、ちょっとロマンがあって楽しくないですか?

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