「全然+肯定」は誤用?

言葉の乱れ?】で、言葉の乱れについて、私は、「言葉は生き物なんだから、そんなに目くじら立てなくても……」というスタンスであることを書いています。
この、「言葉の生き物具合」を非常に短い期間で体現している、すごい奴がいました。
「全然」という言葉がそれです。

現在の大多数の人の認識は、次のようなものではないでしょうか。
「全然」は呼応の副詞であり、「全然~ない」と否定の表現を伴い、「まるっきり~ない」という意味で使うことしかできない。
だから、最近の若者の使う「全然すごい」のような用法は、言葉の誤用であり、けしからん、と。

でも、ちょっと待って下さい!
その誤りの指摘の仕方は、半分正しいけど、半分間違っているのです。

全然には、3種類の使い方があります。
1. (全然+否定で)まるっきり~ない
2. (全然+肯定で)完全に~
3. (全然+肯定で)非常に~
用例としては、
1. 全然進まない、全然問題ない
2. 一体生徒が全然悪いです(夏目漱石『坊っちゃん』より)
3. 全然速い

上の2番目の意味は、「全然+肯定」として使われます。用例を見ていただければ分かる通り、あの有名な明治の文豪、夏目漱石も「全然+肯定」を使っています。
なので、「全然+肯定は誤り」という指摘が誤りなのです。

では、「全然すごい」は本来の日本語として正しいのか?
この答えは「No」なのだと思います。

上の2番目と3番目の用法は似ていますが、決定的に違うものです。
2番目の用例の「生徒が全然悪い」というのは、つまり「全面的に生徒が悪い」という意味です。現在、この用法で「全然」が使われることは非常に少ないように思います。

一方、近年増えてきたのが3番目の用法です。「全然速い」というのは、「非常に速い」とか「断然速い」という意味ですね。
想像するに、「断然」と語感が似ていることから、「全然」も同義の言葉として使われるようになったのではないでしょうか。
この用法は、国語辞典を見ると、まだ俗用であると書かれていることが多いです。

つまり、使われる意味は変わったものの、結果として「全然」という言葉は、昭和初期くらいまでは、「否定も肯定も可」、昭和中~後期頃は、「否定表現のみ可」、そして、昭和後期~平成にかけて、再び、「否定も肯定も可」に変化しようとしているわけです。
ん~、生きてますねぇ。

現在使われている「全然+肯定」の表現は結構多様で、1の用法の派生形ともいうべき用法も良く見られますね。

例えば、
「全然OK」
これは「全然問題ない」という意味で使われているわけで、意味としては1番なんだけど、「OK」という言葉が、表面上は肯定表現となっており、文法的には既存のルールから外れている、ということですね。

あと、
「全然かわいい」
これは、
「かわいくないでしょ?」
「いや、全然かわいいよ」
のような文脈で使われるわけですが、これはつまり、
「全然そんなことはないよ。かわいいよ」
を短縮して表現しているということですよね。

1の用法の派生形に共通するのは、正式に表現すると長すぎるため、会話のリズムを崩さないように、省略した表現にされている、ということですね。

私は、最初に申し上げた通り、「これらの表現は、どれも全然OK」派です。
最終的に、その表現が多くの人にとって有用であれば、その表現はきっと定着し、正式な用法となるのだと思います。

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